医療TOPICS

目指せ!専門・認定薬剤師 vol.1スポーツファーマシスト①

要約すると

  • 『目指せ!専門・認定薬剤師』シリーズでは、薬剤師のさまざまな専門・認定薬剤師制度について、その資格を有し現場で活躍中の先生に紹介していただきます。
  • 今回の専門・認定薬剤師のテーマは「スポーツファーマシスト」です。3回に分けてこの資格の魅力をお話します。この機会にスポーツファーマシストを目指してみませんか?

薬剤師のはつみさんは、スポーツファーマシストに興味があるようです。実際に、スポーツファーマシストとして活躍している先輩薬剤師に、話を聞いてみることにしました。
今回の先輩薬剤師は、遠藤敦先生(株式会社アトラク 代表取締役社長)です。

 

 

はつみさん:はつみ薬剤師
この前、先輩が話をしていたスポーツファーマシストについて詳しく教えてください。

 

先輩薬剤師:先輩薬剤師
まずはじめに、そもそもどうしてスポーツファーマシストが必要な
のか、その背景からお話します。

 

 

禁止薬物の種類・条件は多岐に渡るため、アスリート自身で判断するには限界があった。

このところニュースでもしばしば話題になるドーピングに関する問題ですが、ドーピング検査は基本的に世界アンチ・ドーピング機構が毎年公表する禁止表と呼ばれる薬物リストをもとに行われます。

その薬物リストは成分名、構造名で記載されており、試合の時にのみ禁止される成分、年間を通じて禁止される成分、特定の競技のみにおいて禁止される成分など条件も多岐に渡ります。そのため選手の手元にある医薬品を本人でドーピング禁止物質を含むかどうかを確認することは非常に困難です。その問題を解決するために医薬品、化学物質の専門家である薬剤師を通してその情報提供をしていこうというのがこの制度の始まりです。

この公認スポーツファーマシスト資格は公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構主催、日本薬剤師会協力のもとに2009年から始まった制度です。平成27年3月現在日本に認定者は6000人程度おり、スポーツファーマシスト検索ホームページから各地の認定者を探すことが出来るようになっています。

日本で多い「うっかりドーピング」
アスリートへの薬に関する教育が不可欠

東京オリンピック・パラリンピックの招致プレゼンテーションにおいて、日本はオリンピックにおいてドーピングのないクリーンな国だということをアピールしていましたが、毎年数人がドーピング検査で陽性となる事態が起きています。

日本で起きるドーピング陽性事例のほとんどは、選手の不注意で摂取してしまった風邪薬などに含まれるエフェドリン類などが原因によるものです。
こういった意図しないドーピング陽性事例を「うっかりドーピング」と呼びますが、これを防ぐ専門薬剤師が公認スポーツファーマシストなのです。
活動例としては薬局の窓口でのアスリートの薬に関する相談の対応や、チームや学校などでの教育啓発活動などが主となります。

選手が風邪薬の服用で大会を棄権・・・。
スポーツファーマシストの認知度をあげ、選手にとってもっと身近な存在に!

制度開始から5年が経過していますがまだまだアスリートに認知が進んでいるとは言いがたい状況です。
先日のメディアによる報道でも有りましたが、柔道選手が試合前にうっかり自分で持ち込んだ風邪薬を飲んでしまったため、大会を棄権するということがありました。
選手が自分で薬を買うときにスポーツファーマシストが関与していれば、もしくは遠征チームに帯同していれば防ぐことが出来た基本的な事例であり、非常に残念であります。
これから東京オリンピック・パラリンピックに向けて認定者が増え、相談窓口が多くなれば、もっと選手の身近な存在になれるかと思います。

意外?!気管支拡張薬のクレンブテロールが禁止薬物?
アロチノロールは特定の競技において禁止薬物に該当

基本的には公認スポーツファーマシストはドーピングに特化した資格ですが、スポーツ選手の相談対応という新しい職能は、通常の薬剤師業務に関してもより深みをもたらします。
例えばクレンブテロール(代表商品名:スピロペント®)は通常の薬剤師としての薬効はベータ作動薬としての気管支拡張作用が第一に浮かびますが、ドーピングの世界ではその副作用の一つである筋肉増強作用により、蛋白同化男性化ステロイドと同じセクションに分類されます。添付文書上だけではないそれぞれの成分の特性を理解するきっかけとなることも有ります。

また、アスリートにアロチノロール錠が処方されたときに、なぜそれが処方されたのか、血圧が高いのか、もしくは震えが起きているのか。その震えは試合時の緊張による物なのか、そのアスリートの競技は何なのか。
このアロチノロールに関しては、アーチェリーや射撃などの指先が震えと戦う競技において有利に働くため、特定の競技のみにおいて禁止される物質とされています。そのため、選手の参加競技についても十分に気を配らなければなりません。ただ目の前の薬だけを見るのではなく、アスリートの生活、すなわちQOLを見るという作業は全ての患者さんの対応に通じるものです。

 

はつみさん:はつみ薬剤師
男性ホルモン系の薬剤や血液成分が禁止されているのはなんとなく知っていましたが、震えを防ぐための薬も禁止薬のリストにのっているんですね。禁止薬は、常に禁止になるものだけでなく、試合時だけだったり、特定の競技のみにおいて禁止だったり、さまざまな条件があるんですね。

 

先輩薬剤師:先輩薬剤師
成分だけでなく、選手がどんな競技をしているのかなど、気をつけなくてはいけないことが沢山あります。次回はそういった知識の活用方法を、実際の相談事例を通して解説していきます。

 

目指せ!専門・認定薬剤師 vol.1スポーツファーマシスト②へ続く)